不祥事が生まれる土壌とは?
著者・植村 修一
日本経済新聞出版社、定価850円+税
日銀在職中には自ら考査の現場を担当したという著者が、今もって絶え間なく発覚する企業不祥事の数々を俎上に載せ、どこからそれは起こるのか解明に挑んでいる。不祥事を起こした企業が事後に発表した第三者委員会の報告書を読み解き、報道以上に正確で詳細な情報を把握したうえでの論考なので内容は非常に興味深い。
日本企業は諸外国に比べてコンプライアンスリスクが小さいと見られがちだが、それは単に発見率や摘発率が低いだけではないかと手厳しい。例えば、社外取締役を置いても機能していなかったり、M&Aを繰り返した結果、経営のハンドリングが弱くなって現場任せに放置されていたりするガバナンスの盲点を指摘。また、ビッグデータから不正を見つけ出す手法など最新のテクノロジーを紹介する一方で、現実には不正・不祥事の「ゼロ」はありえず、必ず起きるという前提でいかに頻度を減らすかが予防のポイントだと述べている。
企業人読者にとっては,最終章にまとめられた「不祥事防止のための10か条」が有益なヒントになりそう。
(久島豊樹/HRM Magazine より)