現代史の「転機」を読み解く
著者・速水 健朗
ちくま新書、定価760円+税
著者はかつて編集者だったが、現在は、メディア論、都市論を専門とするフリーランスのライターとして活躍している。
1995年は日本の戦後史において最大級の二つの事件――阪神・淡路大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件―をもって「戦後史の転機となった年」とされている。しかし、著者は「1995年とは、それ以前に起こっていた日本社会の変化を強く認識する転機の年なのである」との立場からさまざまな分野の「転機」を読み解く。
具体的には「政治―ポスト55年体制の誕生」(第1章)、「経済―失われた20年の始まり(第2章)、「国際情勢―紛争とグローバル化の時代」(第3章)、「テクノロジー―インターネット社会への転換」(第4章)、「消費・文化―オカルトと自己喪失の世界」(第5章)、「事件・メディア―大震災とオウム事件の間」(第6章)と多岐に渡る。
確かに、その時はわからなくても、後で考えると明らかに「歴史的転機」と思われる「特別の年」がある。1995年という年がそのような「転機の年」だったことについては、多くの人が賛同するであろう。
しかし、「何から何への転機なのか」については必ずしも明確ではない。例えば、経済は1995年を「失われた20年の始まり」としているが、時期については異論も多いうえ、「失われた20年」からの脱却は達成されたのか、達成されたとすれば、我々はどこへ向かっているのか。また、国際情勢は「紛争とグローバル化の時代」が現在も継続しているが、日本はどのような道を歩めばいいのかまでは示していない。
もっとも、これらは我々自身が考えるべきことであり、本書はそれを考える材料を提供してくれるという意味で示唆に富む。(酒)