広報は企業イメージを決定的に左右する
著者・萩原 誠
彩流社、定価1800円+税
次から次へと起こる企業の不祥事。内容は粉飾決算、社員の使い込み、産地偽装、表示偽装、欠陥商品隠しなどさまざまだが、各社トップがやや薄くなった頭(失礼)を深々と下げて謝罪する光景は日常茶飯事だ。
なぜ、こんなことになったのか。著者は、バブル崩壊から最近まで続いた「失われた20年」の間に、多くの日本企業に染みついた「ガラパゴス経営」に問題の根幹があるとみて、横並び経営、内向き企業風土、国内市場依存など「村社会経営」に根付いた病巣に切り込む。
そこから浮かんで来るのは、企業トップの広報への無理解だという。日常業務の中で上がってくるマイナス情報、大問題になるかどうかを判断する勘、会社を揺るがす不祥事に発展した時の対応など、日ごろから情報開示をきちんとしている会社としていない会社に大きな開きが出て来る。その理由を、社員全体が共有すべき「広報力」の有無に求めている。
著者は帝人で広報畑が長く、退社後も広報に関する研究や講演などを重ねてきた。理屈でなく、体験に基づく豊富な事例を挙げて解説しているだけに説得力がある。やや過剰なカタカナ表記に難があるが、新時代の広報のあるべき姿を示唆する労作。 (のり)