「働きがい」が最優先される時代
著者・細井 智彦
講談社、定価840円+税
会社と個人をつなぐ立場の著者(転職コンサルタント)は、法人もプロファイリング分析の対象になるとし、「会社が病んでいる(うつ化している)」近年の傾向を本書に訴えている。
象徴的なキーワードが「閉塞感」であり、それはポジティブ思考、効果・効率、イノベーション、コンプライアンスといった「正論」で取り囲まれているがゆえに、まともに抵抗すると個人の心が折れてしまうという複雑さも指摘する。“コストダウンもリストラも経営判断としては正しいと思うが、私はそこで働く気がしない”という従業員の疲弊感が再生産される危機を読み取り、そんな状態にあっては、自分のこだわり(業績以外の価値基準)を大事にしたり、息抜きの時間を作ったりするなど、会社から距離を置く客観姿勢も有効だとアドバイスを語っている。
一方、会社側には、ベテラン社員の経験を認め、非効率の余地を残し、個々の適性を活かしていく“働きがいを最大化する社風”を築いてはどうかと示唆する。正論で統制を図るだけが人事の仕事ではないと再認識を迫られそう。
(久島豊樹/HRM Magazine より)