著名精神科医が語るソーシャルメディアへの違和感
著者・香山 リカ
朝日新書、定価720円+税
著者は著名な精神科医であり、その臨床経験を生かしながら、社会評論や文化評論も手掛けている。
本書では「ツイッター、フェイスブック、LINEなどの便利になり続けるソーシャルメディアにより、つながりが増え、コミュニケーションも深まるはずが、どうもそうではない。なぜなのか?」と問い掛け、具体的な事象を取り上げながら、その答えを探っていく。
「新型うつ」や「つながり」がはらむカン違いなどが「SNS疲れ」と言う新たなストレスを生んでおり(1章)、ネットが持つ「非抑制性と匿名性」という魔法で人が傷つけ合う原因である(第2章)と喝破している。
また、「ネトウヨ(ネット上の右翼)が生まれる理由」(第3章)、「歪んだ平等主義」と「いびつな正義感」(第4章)に言及しつつ、ネット・スマホ依存という病(第5章)とその治療法について解説する。
最後に、「SNSは日本人をどう変えるか?」(第6章)と問い掛け、「ソーシャルメディアは限りなく『自分だけの世界』に近いメディアといえる」と結論付け、「対人関係の希薄化、後退を招く」と警鐘を鳴らす。本来なら双方向であるべきコミニケーションを、そこまで「一方向的で身体性が希薄な関係に後退させていいのか」という本質的な問い掛けが我々に迫ってくる。 (酒)