「社畜」から脱出する知恵とヒント
著者・大内伸哉
光文社、定価760円+税
学生たちの就職活動を身近に見て、改めて「正社員」の本質を整理していく労働法研究者による論の運びが面白い。「雇用」を「自営」と対比させ、従属と安定の両面を偏りなく描いていく分析は歯切れがよく論調もクリアだ。
正社員は労働法に守られる立場としながら、その労働法自体が実は時代とともに変質すると俯瞰する。さらに、経営トレンドや労働法制、社会変化の兆候をとらえて「正社員の解体が進んでいる」と“正社員神話の崩壊”も予見している。非正規との違いでは正社員が様々な学習機会に恵まれている点に着目しつつ、身につけるべきは「社内特殊スキル」ではなく「転職力(汎用性のある他社に引き抜かれるスキル)」だと示唆。「転職力」が隷属的労使関係から逃れる担保になると同時に、独立起業へのハードルを下げる効果もあると注目している。
これから働く若者へのアドバイスでは「IT」が社会構造(ヒエラルキー)の大転換をもたらす可能性を秘めていると考察し、「社畜」から脱し自由に働く「プロ」になるためのヒントに引き寄せている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)