ビースタイル ヒトラボ編集長 川上敬太郎氏
「まだ文句あるんか?あるなら、言うてみい」
休日、家族で出かけようとした時、あれは嫌だ、これも嫌だと文句ばかり言う長女に業を煮やした私はそう言い放った。子供は4人。長男にも二男にも二女にも希望がある。家族全員の希望を満たすには、少し我慢しなければならないこともあるのだ。
長女の希望も満たしながら他の子供も楽しめる方法を提案した。文句はないはずなのだが、それでも長女はまだ文句があると言う。頭では理解していても、怒りの感情がまだ心の中でくすぶっている様子。
「おまえの言い分も満たした。もう何も文句はないはずだ」
私にそう言われ、実際に文句などあるはずないのだが、気持ちが切り替えられない。ウーッ、というケモノのような低い唸り声を出しながら歯ぎしりしている。
私:「ほら、何も言えへんやないか。文句なんかないやろ」
長女:「ある!」
私:「あるんやったら、言うてみい。ほら、何か言うてみい。何も言えへんやないか!」
それでも何か言い返そうと、ありもしない文句を必死に考えているのか。30秒ほど、低い唸り声と歯ぎしりを聞いた後、長女は私をにらみつけて口を開いた。
「も、もんくっ!!!」
ロジカルさのかけらもない言葉。文句を言いたいが思い浮かぶ言葉がなく、それでも何か文句を言いたい一心で出た究極の言葉。
国会に審議の場を移す労働者派遣法の改正。労働政策審議会では、労使が議論を尽くした結果と報告された。今回の審議会は、しっかり大人の議論がなされた場だった。
一方、長女と私の間で交わされた子供の議論は、「モンク」の一言で終結。この一件以来、彼女のあだ名は「モンクちゃん」になった。