中国の魅力薄れ、アセアン回帰が鮮明に!
著者・みずほ総合研究所
東洋経済新報社、定価1600円+税
日本企業のアジア展開の矛先がASEAN(アセアン、東南アジア諸国連合)に向いている――。この認識を基に専門研究員8人が手分けして現地を訪ね、1冊にまとめたのが本書である。みずほ総研が毎年実施している企業調査で、2012年度の「最も注目する先」として、1999年度の調査開始以来、アセアンが中国を抜いてトップになった。
アセアンはタイ、マレーシアなど東南アジアの10カ国で構成する経済共同体。近年、中国に次いで経済成長が著しく、日系企業にとって「チャイナ+ワン」としての存在感がますます大きくなっている。
日本にとってアセアンの魅力は1980年代後半からの投資ブームで、大きな実績があること。97年のアジア通貨危機でブームが去り、その後は中国の台頭でアセアン投資は一服状態となったが、近年の高度成長で再び脚光を浴びてきた。
また、中国の高度成長が終わりを迎えつつあり、人件費の高騰など、日系企業にとってのメリットは薄れつつある。さらに、中国の反日ムードがビジネスにもマイナス効果となり、対日感情の良いアセアンでのビジネスに目が向いているという点も見逃せないという。
本書は前半で「ASEANを知ろう」というタイトルで投資環境や消費市場の特徴などを概観。後半では市場規模の大きいシンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムの6カ国について、各研究員が取材した最新情報を盛り込んでいる。新聞やテレビだけではわからない内容が多く、アセアン進出を検討している企業にとっては大いに参考になりそうだ。 (のり)