会社をカモにするブラック士業の手口とは?
著者・今野晴貴
朝日新聞出版、定価760円+税
ブラック企業に荷担する一部の弁護士や社労士の存在を本書は「ブラック士業」と名付けて、彼らの実態を暴き出している。例えば“団体交渉には応じる”といった人事・労務関係者には自明のはずの法規についても、ブラック士業たちはあえて“曲解”を試み、解決の引き延ばしを図るという。その真意は2つ。1つは不毛に事態を長引かせ、高額の裁判費用を見せつけることで労働者側の“諦め”を誘う作戦。もう1つは、依頼主である企業側に“一歩も引かず闘っているポーズ”を示すためだという。
なかには極めて悪質で、読んでいるだけでこちらの体調が悪くなりそうな事例も紹介されているが、一方でどこか滑稽な印象もぬぐえない。恐らく、企業側もしっかり士業の餌食になっているからだろう(敗訴しても弁護士側には着手金はじめ訴訟費用がたっぷり手に入る)。
抜本的な解決策では、司法制度の見直し、ビジネスとは違う次元での労働問題専門家の育成、学生時代からのワークルール教育などを訴え、スケールの大きな構造改革を求めている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)