欧州の代表的経済学者による壮大な人類文明史
著者・ダニエル・コーエン、訳者・林 昌宏
作品社、定価2200円+税
著者はフランスの「ヨーロッパを代表する経済学者」で、本書は2009年に発刊されるや欧州で大ベストセラーとなった著書の日本語版である。
経済学をいわば「羅針盤(コンパス)」とした壮大な人類の文明史を読みときつつ、21世紀への展望を語る刺激的な内容であり、一般向けに読みやすく書かれている。
著者は「経済がいかに文明や社会を創ってきたのか」を軸に、経済学の巨匠たちとともに人類の過去と未来を旅して、21世紀世界が直面する課題を摘出する。
著者によれば、「サイバー・ワールドの暴力」が21世紀の解決すべき課題として立ち上がってはいるものの、「最も深刻なことは別にある」として、中国やインドのような巨大な人口を抱える国が、グローバルマーケットに参画して大量消費をする「エコロジー危機」を挙げる。
従って、「人類は孤独なる惑星と言う限りある環境で暮らす術を学ぶために、新石器時代の革命や産業革命の時のように、懸命に努力しなければならない」としている。その大前提になるのは「世界は無限である、と言う考え方から、世界は閉じているという考え方への移行である」としている。ただ、「そのためには何をすべきか?」までは答えてくれない。 (酒)