ビー・スタイル ヒトラボ編集長 川上敬太郎氏
学生生活を満喫する中、就職活動という新たな試練は唐突に訪れる。
先日見たあるNPOの統計によると、就活開始後に「死にたい・消えたいと考えたことがある」と答えた学生が21%に上ったという。それはちょっと多すぎるのではないかと思い、周囲の新卒1年目の社員数人に聞いてみると、彼らの感覚値とは合致するという。
その時、脳裏に浮かんだのは、自分が就活生だった頃ではなく受験生だった頃の話だ。
22年前に受けた大学入試センター試験。得意だったはずの数学がやたら難しく、完全に失敗したと落胆していた。が、それよりも、その時見たニュースに衝撃を受けた。数学が難しかったことが原因で、医学部志望の受験生が試験中に心臓発作で亡くなったという。
なぜそこまで追い込まれなければならないのか。怒りにも似た感情が湧いた。
精神的に追い詰められる受験生。それでも難関を突破し、ようやく手に入れた大学生活。春の陽気に誘われ、開放感に満ちた世界で酒やタバコを覚えたり、サークル活動に励んだり。受験で灰色に染まっていた人生のキャンバスを、学生は必死に塗り替えようとする。
人生楽しくて仕方がない、という人がいる。それはとても幸せなことなのだが、「だからあなたも楽しみなさい」と言われても、そうは行かない時もある。人生いろいろ。楽しい時もあれば辛い時もある。
おもしろきこともなき世をおもしろく―――。
高杉晋作辞世の句と伝えられるこの言葉に出会ったのはいつの日のことだったか。妙に納得したことを覚えている。
人生に敷かれたレールは1本しかないのだろうか。受験や就活など、人生の岐路で選択肢が一つしか存在しないとしたら、その状態は決して幸せだと思えない。もし常に複数の選択肢を持って生きることができれば、人生何度でも再チャレンジできる。
そう考えると、正社員以外にも、契約社員やパート・アルバイト、派遣社員など多様な働き方が進むのは自然なことだと思う。選択肢が増えることで、人生の中に新しい可能性を見出すことができる。人材サービス業界とは、新しい就業選択肢を提供して人を幸せに導く存在だ。
高杉辞世の句の続き――
すみなすものは心なりけり。
結論、そういうことなのだと思う。