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2013年12月 7日

【この1冊】『若者を見殺しにする日本経済』

「世代間の不公平」を徹底分析

c1312060.jpg著者・原田 泰
ちくま新書、定価780円+税

 

 1950年生まれの団塊の世代が「若者のための経済改革」を訴えたというだけあって、アカデミックな内容にしてはタイトルがどぎつい。しかし、読み進めるにつれて問題の所在が明確になり、「高齢者」手前の評者も「若者のためにひと肌脱ごうか」という気になる。

 著者は、バブル崩壊のデフレと円高のシワ寄せは主に若者がかぶっているという事実を、経済停滞の理由、年金削減の必要性、グローバリゼーションは若者のチャンス、格差解消の必要性、成長戦略のあり方などの項目を立てて解説。官庁エコノミストOBらしく、各種統計の詳細な分析と、そこから導き出される実態を歯切れよいテンポで書き進めている。読んでいて爽快でさえある。

 デフレと円高を解消できなかった責任は日銀にあり、「黒田日銀」になってようやく解消に向かい始めたこと。消費税の税率アップぐらいでは財政再建はおぼつかず、高齢者に手厚い社会保障費を削減しなければならないこと。若者の格差拡大は景気の低迷によるもので、景気回復によって格差も縮小することなど、その主張は正論と言っていいだろう。

 しかし、社会保障が高齢者に厚いのはまぎれもない事実だが、「過度の、しかも、他人の親への親孝行(年金や医療費のこと)を強制するような制度は国を滅ぼす」とまで言われては、高齢者の立場はない。それなら、社会保障の削減にとどめず、豊かな高齢者に高い資産税を掛けて国家に召し上げる政策なんかも打ち出せばよかった。多くの高齢者が定年後も働き続けたいと思っている理由の一つに、年金水準の低さもあるわけだし……。

 しかし、著者の明快な“高齢者切り”を前にすると、そんな反論も口の中でブツブツという感じ。それだけ説得力があるからだろう。 (俊)

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