ネット・ニュース編集者が描く「バカだらけの海」
著者・中川淳一郎
新潮新書、定価720円+税
著者は広告代理店を退職して、自称「ネットニュース編集者」として、インターネットの世界を見続け、そこで発生している「倒錯性」を告発し続けてきた「良識派」。前著『ウエッブはバカと暇人のもの』に次ぐ第2弾である。
ネットの世界で発生している様々な「ばかばかしいこと」を取り上げ、それらを集約化して第5章に「ネットでウケる新12ケ条、叩かれる新12ケ条」としてまとめている。時間のない人はこの第5章だけでも読む価値がある。
特に最近、「叩かれる新12ケ条」に付け加えたという「韓国・中国ホメる」と「反社会的行為を告白する」がますます加速化している、との指摘が注目される。
前者は、ネット上における「朝鮮人を殺せ」などの過激発言に加え、韓国人らが多く居住する東京・新大久保や大阪・鶴橋で「嫌韓」デモが現実に過激化している点。後者は、自己顕示欲を満たすためだけに、自らの反社会的行為をネットで誇らしげに公開する行為についてだ。
著者はこうした状況を踏まえながら、ネットの世界が現実に先行しているのではなく、現実の世界がネットに先行していることを訴えているように思える。
そして、「自分自身はとんでもないほどネットの恩恵を受けている」と認める著者が、「本当の最後に私が言いたいのはこれだけだ」とした以下の言葉の意味は重い。「(ネットの世界で人とつながること、自己顕示欲を満たすこと、金もうけをすること等の欲求を持つにしても)まずは自分の能力を磨き、本当に信頼できる知り合いをたくさん作れ。すべてはそこからだ」。 (酒)