閉塞感を打ち破る方法論
著者・草間 徹
東洋経済新報社、定価1600円+税
20代から50代まで男女4人の深刻な会社員物語から本書は始まる。それなりに一生懸命やってきたはずだが気がつくと袋小路に追い込まれている「閉塞感」を描写し、問題の在処を探りながら、解決のヒントを多面的に模索する構成だ。
組織構造的な問題では、社内人口が逆ピラミッド型になっているのに、なおピラミッド型の秩序を維持しようとする人事の矛盾を見つけている。加えて人材流動性の低さも問題を大きくしていると指摘し、人事のオープン化を進めたり、FA制の導入や外部人材を積極活用したりして流動性を高める手段をアドバイスしている。一方、個人の心理面では、安定志向に萎縮する姿勢やビジネス環境の変化に対する鈍感さを問題視し、社外でも通用する人材を目指し、どんな状況でもチャンスに変えていくしたたかさを求める。
悩める勤労者への個別キャリア相談などではなく、組織に閉塞感をもたらす要因および構造的なカベを明らかにしたうえで、個人・組織・社会の3方向に処方を提言する分析的論考が説得力を伴って興味を誘う。
(久島豊樹/HRM Magazine より)