老後への先入観や誤解を正す啓蒙書
編者・文芸春秋
文春文庫、定価476円+税
本書は月刊誌「文芸春秋」の2回にわたる「老後の真実」特集号(2011年春・夏号)を再編集して文庫化したもの。老後の様々なテーマについて、それぞれの専門家が先入観や誤解を正す観点から執筆・対談しており、興味深い記事が多い。おまけに「お買い得」の1冊である。
我々の「常識や先入観」がいかに誤ったものであるかを思い知らせてくれる記事が多く、それだけでも元気を与えられる気がする。例えば、「歳のせいで物忘れがひどい」「がんは遺伝する」、「糖尿病はカロリー制限すべき」「寝たきりになると長引く」――などはすべて誤り。
「在宅で安心して死ねる日がやってくる」や「老人ホーム入居の心得」など、元気づけられる記事もある。さらには、最終章の車谷暁による読書案内「名著で読む『老後』」も役に立つ。
ただし、本書はあくまで入門書。それぞれの項目についてもっと深く知りたい人、哲学的な「生と死について」深く考えたい人、老後の最大の問題である「孤独と寂寞感」や「死に向かう覚悟」を考える人などには物足りないはず。適切な“専門書”を探す必要があろう。 (酒)