「グローバル・ヒストリー」の観点から大英帝国を構造分析
著者・秋田 茂
中公新書、定価880円+税
「読売・吉野作造賞」の第14回受賞作。大英帝国の18世紀以降の歴史の構造的分析を通して、「グローバル・ヒストリー」という新分野に挑戦した労作である。
「世界史」が西洋史、東洋史、日本史などのタテ割りで論じられたり、各国史の寄せ集めであることに対する批判は以前から存在するが、「グローバル・ヒストリー」として世界史を分析する動きが出てきたのは最近のこと。
本書はヘゲモニー国家としての大英帝国の歴史を英国植民地とのつながりを軸に、インドを中心にした中国・日本を含むアジア諸国との関係性を重視して描いている。
随所に新たな視点が提示され、知的興味が刺激されるだけではなく、現代の「アメリカ帝国」の意義を理解するためにも多くの示唆を与えてくれる。その意味で、本書は18世紀以降の「世界史」を理解するための必読書である。特に、高校の「世界史」の教科書で「ステレオタイプの世界史」しか学ばなかったような人にはお勧めだ。
ただ、英国植民地の拡大を産業資本の利害からではなく、大土地所有者とロンドンのシティの金融・サービス資本が合体した「ジェントルマン資本主義」に主導されたもの、とする説などは、もう少し実証的な分析が欲しいところではある。 (酒)