事件簿から考える職場のルール
著者・杉山 秀文
労働調査会、定価952円+税
「就業規則」に関する解説書では会社側の運営ノウハウをガイドしたものが目立つが、本書は従業員および職場の上司レベルでの活用を前提に記述している点で特徴的だ。
従業員目線といっても「就業規則を守りましょう」とか「就業規則を武器に戦いましょう」といった単純化したメッセージではなく、白黒の判断に迷うリアリティのある「事件簿」(ミニ事例)を20ケース示し、本人・上司の立場を分けてベストな解決策を探る構成になっている。扱うテーマは採用から退職までと広く、さらに「こころの病」「セクハラ・パワハラ」「育児・介護」など新しい課題も取り上げている。日常化している持ち帰り残業や、試用期間中にミスが続く新卒社員の扱い、中途採用者の能力不足を理由とする解雇など、微妙な問題については人事のプロの方にも興味深いポイントと思われる。
問題解決の根拠では、単に「就業規則に書いてあるから」ではなく、会社組織で働く立場から条文の背景を解釈するよう深慮を求めるなど、易しい記述とは裏腹に本質への言及は深く鋭い。
(久島豊樹/HRM Magazine より)