難病の妻との二人三脚闘病記
著者・米本浩二
文芸春秋、定価1300+税
本書は、脊髄小脳変性症という難病を宣告された妻との闘病記であり、2人の娘を抱えた家族との生活記でもある。妻が宣告された2008年から2000日(約5年半)の間に起きた出来事を綴っている。
この病気は小脳の萎縮によって言語障害や歩行障害などを起こす原因不明の難病で、リハビリによって進行を遅らせることはできても、現在の医療水準では完治は困難だ。
多くの難病患者・家族は専門医探しに苦労し、病名がわかると「衝撃→不安→混乱→努力→受容」という過程を経る。受容に至るまでの物理的、精神的な苦しみは、病気の種類や家族環境などで異なる部分はあるものの、「なぜ自分なのか」という不条理感で埋め尽くされるのが普通で、本書も例外ではない。
本書は、妻の通院やリハビリ、家庭での状態などを詳細に描き、この病気の特性を浮かび上がらせると同時に、思春期の娘たちの反応、単身赴任の夫(筆者)の東京と福岡の往復など、日々の生活状況も記録している。
筆者は毎日新聞の学芸部記者であり、全編にわたって記者らしい客観性のにじむ筆致が大きな特徴。タイトルから想像されるような、辛くて厳しい闘病記という印象はなく、時にユーモラスな表現も交えた笑いも散りばめており、どこまでも希望を失わない強い意志が伝わってくる。奥さんの軽快と家族の一致団結を祈るばかりだ。 (のり)