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2013年7月13日

【この1冊】『日本成長戦略 40歳定年制』

機能不全の日本型雇用に鮮烈な提案

c130713.jpg著者・柳川 範之
さくら舎、定価1400円+税

 

 4月から始まった「65歳雇用」に四苦八苦している企業が多いが、そうした雇用延長に真っ向から異議を唱えたのが本書。「65歳定年制では日本は衰退する」と断じ、代わりに出した提案が「40歳定年制」だったことから、経営側にも労働組合にも大きな衝撃を与え、物議をかもした。

 ところが、「40歳定年」の提案をじっくり読むと、これこそ人口減、超高齢化、経済縮小に見舞われている日本にとって、起死回生の変革であることがわかる。趣旨が明快で、わかりやすい。

 本書は終身雇用、年功序列の日本型雇用慣行が経済実態に合わなくなったにもかかわらず、日本型を象徴する「正社員」中心主義を企業が捨てられず、そのシワ寄せが非正規社員の増加という形でひずみを拡大していると分析。「65歳定年制」も年金がらみの弥縫(びほう)策に過ぎず、政府の失政のツケを企業に押し付けただけであり、これでは労働力の有効活用は不可能と指摘している。

 それよりも、「人生三毛作」の時代に合わせ、20年程度の「中期雇用」を目安にして、それぞれの区切りごとにそのまま会社に残るか、別な仕事に移るかを選択できるような労働市場の自由化を推進すれば、「社内失業」を覚悟で正社員のポストにしがみつく会社員は減り、転職に備えたスキルアップにも熱心になる。そうしてこそ、本当に雇用の心配がなくなるというのだ。

 政府の労働政策や多くの企業の雇用政策は、形骸化しつつある慣行を変えられないため、日本の労働現場は低賃金やパワハラの横行など、かなり悲惨な状況に陥っているにもかかわらず、問題の根源を直視しようとしない既得権者の抵抗は激しい。なにより、「40歳定年制」と聞いただけで、「40歳で首を切られる制度」と激しい拒否反応を示す一部労組員に本書を勧めたい。 (のり)

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