大都市でも出現している買い物難民
著者・杉田 聡
中公新書ラクレ、定価840円+税
近所にスーパーや商店街がなく、買い物に苦労している高齢者や病人らの「買い物難民」が増えている。経済産業省によると、その数約600万人、筆者によると1000万人を超えるという。
買い物難民は、以前は地方都市や過疎地の出来事だったが、近年は高齢化した大都市の大規模団地でなども増えており、クルマなどの足を持たない高齢者世帯にとっては由々しき問題。筆者は本書で、問題を解決しようと奮闘する地元自治会、町内会、NPO法人などの活動を幾つも紹介しており、その点は大いに参考になりそうだ。
著者は、今日の事態に至った最大要因として大手流通資本による大型店の郊外出店を挙げている。かつての大規模小売店舗法(大店法)が対米交渉によって大規模小売店立地法(大店立地法)に衣替えし、曲がりなりにも大型店の出店に一定の歯止めをかけていた大店法から、郊外に自由に大型店を出せるようになった大店立地法に“改悪”されたためとして、新たな規制強化の必要性を訴えている。
さらに、クルマで郊外店へ買い物に出掛ける若者世帯にも「市民倫理」を求め、自分の将来を考えれば、できるだけ近所の商店街で買い物をするよう勧めている。要するに、一種の商店街存続運動である。
だが、大店法時代、進出大型店に対してさまざまな要求を突き付け、「協賛金」などを出させてきた商店街は珍しくなかった。「シャッター通り」の増加も、大型店に加えて、旧来の商法から抜け出そうとしなかった商店街の努力不足を指摘する声も根強い。
いずれにしても、高齢社会の本格化によって、買い物難民の一層の増加が予想される今日、コンビニの活用やミニスーパーの多数出店など、チエを絞り出さなければならない時代になっていることは確か。本書にはそうしたヒントが満載されている。 (のり)