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2013年5月18日

【この1冊】『同期の人脈研究』

同期意識が組織にもたらす影響とは?

c130518.jpg著者・岸 宣仁
中央公論新社、定価860円+税

 

  「同じ釜の飯を食った仲間」と肯定的に語られる「同期」とはいかなる人間関係なのか、著者は新聞記者時代の秘話も交えて多面的に真相に迫っていく。サンプルの対象は旧大蔵省、法曹界、企業ではリクルートと竹中工務店。さらに電機業界の社員・OBらへの取材も重ねている。

  「同期」は仲間を支え合う一方、ときに確執の種にもなる。そうかと思うと、世代グループの優位性を誇示するために結束するなど連帯意識にも作用する。こうした特徴を捉えて本稿では「同期=結束と競争の共同体」との定義を導き出している。また、大学の「同窓」を重視する米国の事情と比較しながら、「同期」は“本籍を照会するような機能を持ち合わせている”と、日本社会の特殊性も指摘する。その上で、「同期」の持つ文化的側面を認め、閉塞した社会で疲弊する人々の絆を回復させる鍵になるのではないかと期待も寄せる。

 関係者へのインタビューが充実していて、論考のタッチは研究書というよりドキュメントあるいはドラマに似て、逸話の展開が面白く読める。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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