通勤の美学ここに極まる!
著者・田中一郎
メディアファクトリー、定価743円+税
勤労者および広く社会の安全のためにいつか整理が必要だと常々思案していた諸課題がついに書籍化された。電車通勤者の多くが日々“一触即発”のリスクを回避すべく身につけてきた語るまでもない経験則を1冊に仕上げた企画力にまずは脱帽である。
通勤カバンや傘の持ち方、吊革のつかみ方、空いた席への座り方ほか、視線の置きどころ、整列乗車での並び位置、改札付近・駅構内での衝突・接触を避ける歩き方、乗車前の体調管理に至るまでアドバイスは具体的かつ理にかなっている。本書のすごさは、「正しい乗り方」に加えて「美しく乗る」次元にまで洗練を極めていることだ(ひと言で示せば「気配り」となる)。例えば満員電車に身体をねじ込むときは「背面で、かかとからが基本」といった具合。
面白おかしい表現は控えめで、むしろ真面目な記述ゆえコメディ度が増す傑作効果も生んでいる。とりわけ、安全乗車、盗難防止、傷害事件・痴漢冤罪回避策などは、通勤災害を含めて社員の安全に責任を負う総務・人事担当者必読の項目と思われる。
(久島豊樹/HRM Magazine より)