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2013年3月16日

【この1冊】『資本主義という謎~「成長なき時代」をどう生きるか』

最先端エコノミストと社会学者の資本主義をめぐる対談

c130316.jpg著者・水野和夫、大澤真幸
NHK出版新書、定価860円+税

 

 最先端を走るエコノミストと社会学者が、経済学や社会学だけでなく、歴史学、文化人類学、宗教学、経済史学、哲学などの知見を総動員して資本主義について論じた対談集である。

 「資本主義はなぜ西洋で誕生したのか?」「法人の起源はどこにあるのか?」「キリスト教との関係は?」「国家との関係はどう変わるのか?」「成長なき資本主義は可能なのか?」など、刺激的テーマを縦横に論じており、資本主義の過去と未来に興味のある人なら大いに知的興奮を味わうことができよう。

 ただ、対談を重ねても、仮に現在が中世から近代への転換期に匹敵する「大転換期」であるとしても、資本主義の後に来る体制は少しも見えてこない。「『成長なき時代』をどう生きるか」という問い副題の問いにも、明確な答えが提示されているわけではない。

 水野氏によれば、現在は「既存のシステムが機能不全になって、かつ新しいシステムの姿、形がまだ見えていない“歴史の危機”の前半戦が終わった」あたりに相当し、「個々人にとって大事なのは、今の置かれた環境に絶望しないこと」だという。

 他方、大澤氏も「未来の他者と僕たちが連帯していること」を「骨子に肉付けして具体像を与えることが次の作業になる」と言うにとどまる。その意味では、本書の副題に引かれて手にする読者は肩透かしを食うかもしれない。 (酒)

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