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2013年3月 9日

【この1冊】『婚活難民』

女性から見た婚活ブームの深層

c130309.jpeg著者・にらさわ あきこ
光文社、定価1300円+税

 

 東日本大震災から間もなく2年。震災は日本の社会にさまざまな影響を与えたと言われるが、たとえば結婚。多大な犠牲を目の当たりにして、「絆(きずな)」の大切さに気付いた若者が伴侶を求めて婚活ブームが起きたというもの。しかし、厚生労働省の調査では2011年の年間結婚件数は約66万件と戦後最低を記録し、翌12年は1万件ほど増えたが、至って低水準のままだ。

 わざわざ無粋な統計数字などを挙げたのも、本書を読んでしまったため。著者は恋愛、結婚などをテーマに活動する売れっ子ライターで、独身女性に幅広いネットワークを持つ。本書の執筆にあたって100人以上の婚活女性に取材、本書はそのうち12人のケースをまとめた「渾身ルポ」という。

 登場するのは30~40代の女性が多いが、ほとんどが収入のうえでも自立した「魅力的な」女性ばかり。それなに、なぜ婚活がうまく行かないのか。さまざまな理由があるが、俎上(そじょう)に上った女性たちの感性が繊細過ぎて、相手の長所よりも短所が先に見えてしまう傾向がある。

 だから、デートしても、「おやじ臭がする」といった、どうでもいい理由で暗礁に乗り上げる。結婚願望の強い女性にインタビューしたそうだが、本当に強い願望を持っているのかどうか疑わしい。月並みだが、「自分にピッタリ合う男なんていませんよ」ということになりそうだ。「婚活難民」と言っても、“自発的な”ケースが多いから、果たして「難民」と言えるかどうか。

 とはいえ、ひと口に婚活と言っても、集団お見合いあり、バスツアーあり、少数ゼミ形式ありと、出会いの場を設ける婚活ビジネスの隆盛ぶりにも驚かされる。そこに大金を投じても成果が出ない時は、お金を返してもらえないのかね。「貧乏父さん」の評者はつい余計な心配を……。 (のり)

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