ビー・スタイル ヒトラボ編集長 川上敬太郎氏
巨人、大鵬、卵焼き。齢40の私は、この言葉が流行した当時を知らない。
しかし、時代を象徴する単語がその当時の活気を如実に物語り、不思議と私に懐かしい思いを抱かせる。一説には、子供じみた大人を揶揄(やゆ)する意味で使われた例えとも言われるが、そうであればなおのこと、子供だけでなく当時の日本国民全員を笑顔にする象徴的な言葉だったと言える。
高度成長期時代の国民は明るく元気だった、とだけ説明されても、その当時の温度感まではつかみづらい。王、長嶋を擁する巨人軍や横綱大鵬の活躍、食卓の卵焼きに目を輝かせる子供の笑顔を思い浮かべることで、鮮明に当時の熱気をイメージできるのだ。
3月2日に開幕したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。野球世界一を決める大会だが、米国ではあまり注目されていないと言う。一方、日本では第1回大会から大いに盛り上がり、過去2回の大会をいずれも制している。
それは、イチローや松坂といった日本のスーパースターが出場していたことと無関係ではないだろう。相手が米国であろうがキューバであろうが、このメンバーで日本が負ける訳にはいかない。そんな緊張感が日本国内におけるWBCの注目度を高めたように思う。
巨人におけるON、プロレスにおいては力道山など、個の活躍が社会に新しい価値を定着させ、時代を作っていった。
人材サービス業界においても、魅力ある「個」は存在する。人材派遣業界のカリスマ的存在であるテンプスタッフ創業者の篠原欣子氏や、人材紹介業界の伝説的ハイパフォーマーであり、主婦としての顔も持つ森本千賀子氏などはその一例だ。
やはり魅力ある個の1人である高齢社の上田研二氏は、ジャパンベンチャーアワード2013において高齢者雇用支援特別賞に輝いた。せんえつながら、ビー・スタイル代表の三原邦彦も中小企業庁長官賞を受賞している。
まだ名前は知られていないものの、魅力的な人材サービス業界人は他にも多数存在する。それは必ずしも経営者や管理職に限らない。むしろ現場最前線で活躍する営業担当やコンサルタント、派遣社員などの中にこそ可能性を感じる。
熱い思いでサービスを提供し、顧客から引っ張りだこの営業担当や、ハイスキルを武器にあちこちの派遣先から引く手あまたの派遣社員など、人材サービス業界における力道山やイチローのようなスーパースターを、我々業界人なら1人や2人挙げられるはずである。
巨人、大鵬、卵焼きがその時代を彩ったように、魅力ある個は、時に社会の中に新しい価値を生み出すほどの力を持つ。そんなヒーローの出現を想像するだけで、なんだかワクワクしてしまうのである。