定年後、あなたは何をしたいですか?
著者・上田 研二
WAVE出版、定価1400円+税
著者は「高齢社」というユニークな社名で知られる、高齢者専用の人材派遣会社を経営、成功させた“高齢者の星”。定年を迎えた高齢者を遊ばせておくのはもったいないと、年金併用型の週2、3回勤務をベースにした会社を2000年に設立し、10年ほどで売上高4億円の規模に押し上げた実績を持つ。
第1章「働く生きがいを」から第5章「高齢社会にもの申す」まで、「60代前半は若造。後半から働き盛り」「生涯学び、臨終で卒業」「仕事には生きがいがつまっている」など、高齢社会の指針となりそうなキーワードが至るところに散りばめられている。
定年後のサラリーマンといえば、「濡れ落ち葉」「ワシ族」「産業廃棄物」など散々な言われ方だが、著者はこうした傾向のあることを認めつつ、“汚名返上”のためにも「無理をしない範囲で仕事を」と訴える。同時に、企業に対しても、職場に高齢者が入ることで、若手との意思疎通や技能伝承などができるメリットがあることを、実例を交えて強調している。
著者の講演と同様に、筆致も飄々(ひょうひょう)としてユーモアにあふれ、読み進めるうちに「オレも働こうかな」と高齢者をその気にさせる雰囲気のある1冊だ。
著者は「高齢社モデル」を業種、地域にかかわらず拡大することを目的に、09年に「高齢者活躍支援協議会」を設立し、現在、理事長に就いている。持病のパーキンソン病を抱えながら、元気な高齢社会の実現に貢献しようと奮闘している姿は、「あなたもできる!」と呼び掛けているようだ。(のり)