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2012年10月20日

【この1冊】『入門 医療政策~誰が決めるか、何を目指すのか』

「医療政策」を考えるヒント満載

c121020.jpeg著者・真野 俊樹
中公新書、定価880円+税

 

 つい最近まで、日本の医療は「質量ともに世界最高水準」「世界に閑たる国民皆保険制度」と自他ともに認める充実ぶりだった。ところが最近、マスコミなどでは「医療崩壊」「患者のたらい回し」「医療事故」「皆保険制度が危機」など、明るい話はほとんどない。なぜ、こんなことになったのだろうか。
 
 医療経済・経営学の専門家である著者は、本書でこれらを「医療政策学」の観点から分析、問題点を明らかにしている。医療は医師、患者、保険者、医療産業、行政など利害関係者が多種多様であり、そのため議論も複雑、膨大になりがちで、簡単に結論の出る分野ではない。

 現代医療の諸問題をめぐっては、さまざまな立場から意見や提言があふれているものの、総合的な見地からのものは少なく、著者は「議論を整理し、混乱があればその本質を学問的に整理する」医療政策学を提案する。学問的にはまだ確立されているとは言えないが、日本の学術部門に欠けている分野であることは確かだ。

 本書は「現在の医療の政策課題」「日本の医療の歴史と特徴」など8章で構成し、医療の内外の歴史や日本の特徴などを解説したうえで、最終章では「日本の医療の今後と政策への提言」としてまとめている。

 題名に「入門」と銘打っているが、内容はアカデミズムの色彩が濃く、一般の国民がすんなり理解できる内容ではない。しかし、現代医療の混乱を掘り下げていくと、どれも本書が指摘する問題・課題に行き着くことがわかり、医療政策に興味のある向きには格好の1冊だ。(のり)


 

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