ビー・スタイル ヒトラボ編集長 川上 敬太郎氏
「今日という日は、昨日死んだ誰かが死ぬほど生きたかった明日である」
出典は不明だが、そのような意味の言葉を耳にして妙に納得したことがある。
内閣府によると、2011年の自殺者数は3万651人。1時間平均で3.5人が自殺している計算になる。昨日死んだ誰かが「死ぬほど生きたかった明日」を自ら放棄した人が毎時3.5人。自殺した人の視点に立つと、上の言葉は次のように変わる。
今日という日は、昨日死んだ誰かが死ぬほど避けたかった明日である、と。
ある映画で見たワンシーン。世界を滅亡から救おうと宇宙に飛び立つヒーローに、毒薬が渡される。いざという時は安楽死できるようにという配慮から渡された「優しさ」のこもった毒薬である。最終的にヒーローは宇宙に残ることと引き換えに世界を救い、自らの意思でこの毒薬を使った。
人は常に選択して生きている。
朝おきたら、すぐ起きようか、二度寝に入ろうか。靴をはくとき、右から履こうか、左から履こうか。デザートは、アイスクリームを食べようか、かき氷にしようか。プロポーズするとき、花束を渡そうか、指輪を渡そうか。
選択の仕方で、その人の人生は変わる。あのとき、あいつに声をかけていなければ今の自分はなかったと思える友人。挫折にくじけそうになったが、奮起したことで成功につながったという経験。たまたま入った竹やぶで偶然1億円拾った、なんてこともある
選択肢は多い方が良いと思う。選択肢が多いほど、選択の幅は広がる。
人材ビジネスは、求職者の選択肢を広げるサービスである。正社員も派遣社員もパートタイマーも、全ては雇用形態上の選択肢のひとつ。何を選択するかで、その人の人生は変わっていく。
大切なのは、その人が自らの意思で何を選ぶかだ。ただし選択肢が不十分な場合は問題。不本意な選択をせざるを得ないとしたら、その人の人生は良くない方向へと変わることになりかねない。だから人材サービス提供者は、選択肢の幅を広げることに全力を尽くす。
自殺者3万人余という数字は、人生の最後の場面で不本意な選択をした人の数だと言い換えても過言ではないだろう。なぜなら、自殺以外の選択肢がなかったのだから。
いま、あなたの人生には自殺以外の選択肢がいくつあるだろうか。選択肢があるということは、本当に幸せなことではないだろうか。
昨日死んだ誰かが「死ぬほど生きたかった明日」をどのように生きるか。いま目前のひとつひとつの選択が連綿とつながって、これからのあなたの人生を形成していく。