インタビューの謙虚な“極意集”
著者・阿川 佐和子
文春新書、定価800円+税
週刊文春などで長年にわたり、著名人インタビューを重ねてきた著者が明かしたインタビューの“極意集”だが、別にむずかしい話ではなく、対談の裏話集といった趣が強い。自らの体験を基に、35の要点にまとめたもの。
インタビューという仕事は、相手に関する資料を事前に集めて頭に叩き込み、用意したテーマに沿って質問する。と言ってしまえば簡単だが、実際には相手の機嫌や体調などで話を引き出せなかったり、話がわき道にそれたままタイムアウトといった“トホホの取材”も少なくない。
著者はそんな成功例、失敗例をたくさん引用しながら、相手から面白い話を引き出す“極意”を披露する。たとえば、大きな質問は三つまで、後はその時の流れで。取材中は相手の目を見て受け答えするのが基本だが、国や人によっては見ない方がいい文化もある。深刻な話の場合、安直に「その気持ち、わかります」などと口に出すのはご法度など、普段の会話にも応用できそうなポイントが並ぶ。
総じて、著者は話を引き出すのがうまく、「アガワさんと話すとつい喋りすぎちゃう」と言われることが多いそうだ。さすがは、この道の達人。全編を通じてにじみ出ているのは謙虚さであり、常に相手を思いやり、失敗したら素直に反省し、自分のスキル不足を次に生かす工夫を心掛ける。そんな姿勢が浮かび上がってくる。芸能界に興味津々のミーハー族にもお勧めの1冊。(のり)