実は「ダサイたま」ではない!?
著者・谷村 昌平
言視舎、定価1400円+税
この出版社が出している「逆襲シリーズ」のひとつだが、「埼玉こそ“逆襲”という言葉が相応しい」とプロローグにあるように、首都東京の陰に隠れて「な~んもない県」の見どころを満載している好著、と評者は評価する。
埼玉がこれまで受けてきた「仕打ち」、「仕打ち」を逆手にとって逆襲、意外に多い商業や工業の「日本一」、県民性など5章に分けて詳細に解説。話し言葉でおもしろおかしく論じてある。
埼玉という地域は、もともとは「武蔵国」の中心だったが、江戸幕府のオープンによって江戸に奉仕する“従属地”に成り下がり、明治以降もそれが続いてきた気の毒な県なのだ。
加えて「ダサイたま」とバカにされ、都内に通勤する「埼玉都民」は地元にまったく無関心。横浜、湘南を抱える神奈川県に比べ、同じ「首都圏」でここまでイメージが低いとは……。
確かに、神奈川に住む親類などが、時々、湘南ナンバーの車でやって来ると、「な~にが湘南ナンバーだよ。ドライバーはオレの方が品性が上」と毒づきながら、所沢ナンバーの愛車に一抹の寂しさを覚える心理は独特のものですね。
しかし、今や人口720万人と全国5位の大県。かつて、経済企画庁(現内閣府)の「豊かさ指標」統計で、6年連続の全国最下位というラク印を押され、頭にきた知事が「そんなに豊かでない県の人口がなぜ増えるのか」と経企庁にかみついたエピソードもある。そりゃ、そうだよな。
本書はイメージ論と同時に、歴史や統計にも詳しく、「埼玉は日本一、快晴の多い県」など、意外な事実発見も楽しめるが、最後にささやかなクレームをひとつ。巻頭に掲載している埼玉県の地図に、蕨市や和光市が載っていない。とりわけ、和光市は埼玉の最南端。川口と並んで都内(この場合は池袋)への入り口にあたる市として人気があり、省略するなんてなに考えてるの!(のり)