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2012年7月28日

【この1冊】『 ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』

自己啓発の落とし穴

c120728.jpg著者・漆原直行
マイナビ、定価830円+税

 

 この10年ベストセラーに名を連ねてきた自己啓発系のビジネス書を俎上に載せ、ブームが内包する危なっかしさを指摘している。「〇〇するだけで」「ラクして」「効果10倍の」といった成功をあおるキャッチコピーをいちいち真に受け振り回されるビジネスパーソンらを取材し、本末転倒ではないかと危機の本質を突く。

 著者自身はビジネス書に接すると、言いくるめられるような窮屈さ、強迫観念を覚えるとし、共通してみられる「何事にもポジティブな考え方」には米国由来の“ポジティブ原理主義的な胡散臭さ”が読み取れるとも述べている。どうせなら、たまたま時流に乗った成功者の自慢話などではなく、権威ある原典を読むべきだとも語り、米国発では『7つの習慣』と『思考は現実化する』の2冊を、また日本発では松下幸之助氏、井深大氏、本田宗一郎氏らの経営哲学書を推奨している。

 皮肉の効いた筆運びがスリリングな一方、「本に振り回されるのではなく、今の職場、足下の仕事で実績を固めるべきだ」とするアドバイスは手堅く、説得力は十分。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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