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2012年7月14日

【この1冊】『おとなの進路教室。』

自分で考え、自ら答えを引き出す

c120714.png著者・山田ズーニー 
河出文庫、定価620円+税

 

 人によって大小の差はあるが、誰にでも悩みはある。健康、家族、就職、恋愛、生活など、いつになっても尽きない。では、その悩みをどのように解決、解消していくのだろうか。人に話を聞いてもらったり、あるいは占いで観てもらったりするなど、さまざまである。本を読んで解決のきっかけを得ることもあるだろう。

 本書は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載中の「おとなの小論文教室。」からいくつかテーマを選択し、まとめたもの。この連載は、読者からの悩みや相談、疑問など、寄せられたメールをもとに著者が受け答えるコラムページ。しかし、悩みに対して明確な答えが示されているわけではない。コラムを1つのきっかけに、自分自身で「考えて」答えを導き出させるのだ。

 第一章の「正しい選択って何ですか?」では、11のコラムがある。「意志ある選択が人生をつくる」「やりたいことを発見する方法」「分岐点」など、引き付けられるタイトルが並ぶ。「意志ある選択が人生をつくる」では、大学受験に失敗してあきらめかけた夢を、少しのアドバイスと意志で自身を立て直した著者の姪の話から、人生の選択肢について語る。

 いわく、受験も、就職も、人生の選択も、ある日突然、ふってわいてくるのではなく、すでにそこにあるもの。それは、日々、一瞬一瞬、行ってきた、ささやかな意志の選択の積み重ねが自分を導き、自分の道(人生)ができているから。だから、何かを「選択しなければならない」こと自体がその人の「意志」であるといい、その「選択しなければならない」ことを「有利、不利で、自分が導いてきた意志をすりかえることはおかしな話」だという。また、「意志に忠実な選択こそが自分の人生を創る」と考えを語る。

 わかっていたようでわかっていない自分の意志や思い、考えなど、著者自らの体験をもとに、ていねいにヒモ解き、「言葉」で分かりやすく紡いで示してくれる本書。そこに明確な答えはないが、自身でよく考えることで、自分のことがよく分かり、よく見えるようになるだろう。

 著者は売り出し中の文章表現・コミュニケーションインストラクターで、「ズーニー」はカシミール語で「月」の意味。 (聰)

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