日中の架け橋を目指す日本人の「体験的中国人論」
著者・加藤嘉一
日経プレミアムシリーズ、定価850円+税
「中国で最も有名な日本人」として『中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか』(2011年)を書き、日本でも一躍注目を浴びた著者による「体験的中国人論」の続編。
年間300回以上の取材を受け、200本以上のコラムを書き、100回以上の講義をする著者は、他の中国研究者や中国ウオッチャーと異なり、現在の中国と中国人に関する生の情報を伝えてくれる。その意味で、第5章「歩いてみればわかる中国の真実」だけでも一読の価値がある。
ただし、本人が『われ日本海の橋とならん』(2011年)と気張ってみても、結局は著者も日本人であることから逃れることはできない。
事実、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件後は大学での講義、テレビ出演、講演会の90%以上がキャンセルされ、改めて日中関係の難しさを痛感したと言う。
「対日関係のマネージメントは中国共産党にとって本質的に「内政」であり、強硬策に出るにしても、軟弱姿勢を示すにしても、それは常に『諸刃の剣』を意味する」ことは、政治家も外務官僚も肝に銘じておく必要があろう。
これを無視して、河村名古屋市長のように「南京事件はなかった」などと公言すれば、どのような反響があるか、容易に想像できるはずだ。だからこそ、日中関係に携わるすべての人は、「われ日本海の橋とならん」としてがんばっている著者の心を虚心坦懐に読んでみるべきであろう。 (酒)