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2012年4月28日

【この1冊】『理不尽な給料』

格差の現実を知って賢く働くヒント

c120428.jpg著者・山口俊一
ぱる出版、定価1400円+税

 様々な角度から給与格差を考察する本書は、「同一労働・同一賃金」の原則に照らしたとき仕事の価値(責任・難しさ・実績)に関係のない格差を6つのパターンに分類。独自の“理不尽度”を加えて、次のようにはじき出している――①企業間格差(30%)、②年齢・役職間格差(40%)、③職種間格差(50%)、④男女間格差(60%)、⑤雇用間格差(70%)、⑥官民格差(90%)。

 全体の概観では、この10年、勤労者の平均年収は下降の一途を辿っているものの、競争の少ない業界や公務員の世界では賃金の高止まりが目立つと分析している。また、生涯年収でみた場合、非正規労働者の限界は明白ながら、学歴別では院卒が必ずしも大卒より有利ではない現実も見つけている。

 もっとも著者は、理不尽な就労構造を多層的に把握しつつ、「不自然な状態はいずれ修正される」と述べ、その是正については歴史に委ねる構えだ。職業選択、キャリア開発、労働の付加価値など、考えるべき課題を示し、読者個々人には「報われるフィールドでの努力」を示唆している。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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