平家滅亡の最大原因はゼニだった
著者・山田真哉
講談社、定価1300円+税
古来、平清盛といえば「おごれるものは久しからず」の象徴として、源義経の人気の対極にある「悪人」として描かれることが多かった。しかし、近年は平家研究が進み、NHKの大河ドラマの効果もあって、平家見直しの機運が高まっている。
本書もそのひとつ。ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社、05年)の著者が、会計学の技術を駆使して、清盛の成功と失敗のナゾの解明に挑戦したもの。
それによると、平家の真の成功は朝廷に取り入ったからでもなく、真の失敗も源氏対策を間違ったからでもない。カギとなるのは「宋銭」だという。宋銭は清盛が宋から大量輸入・流通させ、国内の商業振興に大きく貢献したものだが、なぜその宋銭が平家の命取りになったのか……。その辺は本書を読んでいただきましょう。
通貨問題と同時に、平家を重商主義、源氏を重農主義に分類するなど、両者の政治経済政策について経済理論を使って分析する著者の着眼点はユニークだ。また、平家が清盛死去からわずか4年後に滅亡した事実に対して、「清盛がそのまま重商主義を推進していたら、日本の国の形はもっと違ったものになっていたかもしれない」と感想を述べている。現代につながる日本の「土地本位制」は平家滅亡が発端、というわけだ。
そうした視点で大河ドラマを観ると、もっと楽しめそう。「平家物語」だけが平家にあらず。 (のり)