韓流時代劇の人気と実像を楽しく解説
著者・康 煕奉(カン・ヒボン)
実業之日本社、定価762円+税
日本の韓流ブームも映画、テレビドラマ、アイドル歌手グループと多様化して、もはや一過性の盛り上がりではない。人気のテレビドラマも、「冬のソナタ」から始まった現代のラブストーリーものに加え、朝鮮王朝を舞台にした一連の時代劇が大変な人気だ。
日本ではNHKが「チャングムの誓い」で大ヒットを飛ばしたのに続き、「イ・サン」「トンイ」と次々に放映し、視聴率を稼いでいる。日本のファンは波乱万丈のストーリーや、イケメン・美女の主人公たちにメロメロ。ロケ地のセット見学ツアーに出掛け、ドラマの主人公になった気分を味わう。当初はオバサマ方が多かったが、最近はオジサマも目につく。きっと、感化されたんだな。
なぜ、韓国の時代劇がこうも人気を集めるのか(ついでに、なぜ韓国にはスレンダー美人が多いんだろう?教えて)。本書は「チャングム」や「イ・サン」などの代表シーンを引用しながら、その時代背景などをわかりやすく解説。楽しい読み物にしている。
韓流時代劇の特徴のひとつに、1時間ものドラマで50~80回という長編が挙げられる。日本でこれに匹敵するのはNHKの大河ドラマぐらい。TBSの「水戸黄門」という超長編ものもあったが、ちょっと毛色が違う。見ていてハラハラしないし、最後は「この紋所が」の“予定調和”ですからね。
実際、宮中の陰謀合戦は「よくもまあ、次々と」と思わせるほど多種多様であり、それがまた見る者を引きつけるのだが、本書によると、それらは脚本家が勝手に作ったものばかりではなく、「朝鮮王朝実録」という詳細な官製史書がきちんと残っており、歴代王や王妃たちが何をしてどうなったか、後世の人にもわかるようになっているからだという。これはすごい!
本書のヒットに気をよくした著者は、『古代韓国の歴史と英雄』『朝鮮王宮 王妃たちの運命』と立て続けに姉妹編を出すなど絶好調。在日2世として、日韓両国の歴史を知るジャーナリストならでは。 (りえ)