明るい職場を取り戻せ
著者・酒井 穣
東洋経済新報社、定価1500円+税
先達の研究成果と科学的考察を手がかりに、職場のコミュニティー論を深掘りする著者は、企業収益を絶対とするとき、職場は“明るいほうがいい”ではなく“明るくなければいけない”と結論づける。タイトルの「ご機嫌な」とは活性化された状態を指し、活性化された組織では“学び”も促進されると関連学説を披露する。
一方で、ネット社会の今、従業員らは社外のコミュニティーにいくらでも参加・所属でき、しかもそれらコミュニティーの質・量は仕事上のつながりを上回ると指摘。会社と従業員の関係が危機的な状況下で、職場がいかにして活性状態を取り戻せるのか、本書は有益なヒントを探っていく。そして、活性化にあたって注目すべきは、公式の会議体ではなく自由度の高い「非公式のコミュニケーション」だとし、社内読書会、飲み会、クラブ活動支援などの実践事例も紹介している。
筆運びはどこまでも科学的であり、懇親会(飲み会)におけるファシリテーション(注)分析に至ってはややコミカルにも受け取れるが、それだけ現場目線で一貫した内容であることは確かだ。
(久島豊樹「HRM Magazine」より)
注:ファシリテーション・・・活動が容易にできるよう支援し、うまく運ぶように舵取りする技術