コラム記事一覧へ

2012年1月21日

【この1冊】『世界経済は通貨が動かす』

世界経済の包括的分析と「ドル基軸通貨体制」存続論

b120121.png編著者・行天豊雄
執筆者・公益財団法人国際通貨研究所
PHP研究所、定価1800円+税


 元財務官で、わが国の通貨問題の第一人者である行天氏が理事長を務める国際通貨研究所の総力を結集して書かれた。

 1970年代以降の金融・経済危機を包括的に分析し、巷にあふれる「ドル基軸通貨体制」崩壊論、ドル・ユーロ・人民元による3極通貨体制論、SDRのような新国際通貨創設論などを退け、米国がよほど大きな政策ミスを犯さない限り、現在の「ドル基軸通貨体制」が存続すると説く。

 従って、第6章の「戦後の国際通貨制度の変遷と二十一世紀の展望」の部分だけでも、熟読玩味する価値がある。さらに、一般には難しいと思われている金融・通貨問題を分かりやすく、包括的に分析しているため、70年代以降の金融・通貨危機の概要を勉強するには最適な教科書だ。

 ただ、今もアジアの中心国である日本と「アジアで唯一のハード・カレンシー(他通貨との交換可能通貨)」である円の今後の方向性について、もう少し踏み込んだ解説が欲しいという思いは残る。 (酒)

PAGETOP