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2012年1月14日

【この1冊】『就活は3年生からでは遅すぎる!』

「就職氷河期」はなくならない

c2012014.jpg著者・田宮 寛之
東洋経済新報社、定価1300円+税

  「就職氷河期」という言葉が登場したのは、確かバブル崩壊直後の1990年代初期だったと記憶している。90年代終盤の金融システム危機を頂点にした「失われた10年」を経て一度は終息したが、2008年のリーマン・ショックで「就職氷河期」が再来した。

 そう概観すると、景気動向によって「氷河」は溶けたり凍ったりするように思われるが、著者は「氷河期は景気の問題ではなく、社会構造の問題であり、景気が上向いても就職が容易になることはない」と切って捨てる。

 何とも残酷なモノ言いではないかと思うが、読み進めていくとその理由が明快に語られる。大学生の数が増え過ぎ、企業の求める水準に達していない学生が多いこと。経営のグローバル化に伴い、企業は日本人だけでなく、優秀な外国人も採用する姿勢を強めていること。そんな「構造問題」が背景にある以上、もはや「氷河期」とも言えない状況になっている。

 「だから、3年生になってから、にわか勉強してからでは遅い」と著者は言う。しかし、1~2年のうちから就職活動のノウハウを勉強せよと言っているわけではなく、まずは学業専念。合わせて英語力を磨き、インターンシップ制などを通じて、ある程度の社会常識を身に着けておけ。大企業ばかり目を向けず、優秀な中小企業にも注目せよ、というアドバイスだ。

 企業は「優秀な」学生を求めているが、「優秀」に対する企業と学生の認識に大きなギャップのあることも指摘している。短時間で読めるが、単なるノウハウ本でもなく、学生が忘れがちな就活の本質を易しく解説している。

 それにしても、就活で外国人学生と競争する時代になった。グローバル化の必然的な側面ではあるが、今の学生さんは大変だ。 (のり)

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