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2011年12月24日

【この一冊】『世界の常識vs日本のことわざ』

グローバル化対応に役立つ実践的考察

111224book.jpg『世界の常識vs日本のことわざ』
著者・布施克彦
PHP新書、定価720円+税

 

 「日本の常識は世界の非常識」だろうか――。

 そんなこともあるだろうし、そうでもないこともあるだろう。大手商社で約15年間、米国、インドなど4カ国の駐在経験を持ち、ビジネスと生活の両面で日本と海外の異文化に接してきた著者ならではのユニークな実践的考察だ。

 「世界じゅうどこでも通用することわざ」「世界どこでも理解されにくいことわざ」など、全5章に50本の日本のことわざを取り上げ、海外と比較している。

 世界共通のことわざとしては「郷に入っては郷に従え」。「ローマにいるなら、ローマ人のように行動せよ」(イタリア)、「山羊小屋ではメーと鳴き、水牛の囲い場ではモーと鳴け」(マレーシア)など、同じような意味のことわざは多い。

 反対に、「能ある鷹は爪を隠す」は日本では美徳だが、自己主張が当然の欧米などでは通用しないことが多いのは周知の事実。しかし、著者は日本人が必ずしもプレゼン上手になる必要はなく、実践で能力を証明する方がベターとの考えから、「自分の爪の鋭さを知ろう」と言う。なるほどね。

 全編を通じて流れているのは、日本を含む各国・地域のことわざには、それぞれの歴史、地理、文化、気候などが凝縮されており、それを理解せぬまま日本の基準で判断したり、日本の流儀を押しつけるべきではない、ということ。

 経済を中心にグローバル化が急ピッチで進む現代だが、必ずしもことわざまでグローバル化しているわけではない。逆に、各地のことわざの背景を知ることからグローバル化が始まるのかもしれない。本書はそんなことを考えさせる。(のり)


 

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