就活の早期化・長期化への警鐘
『就職とは何か~<まともな働き方>の条件』
著者・森岡 孝二
岩波新書、定価760円+税
今月1日から2013年3月卒業予定の大学生の就職活動が解禁となった。経団連の活動自粛による、例年より2カ月遅いスタートだが、マスコミなどは昨年に続いて「超氷河期」と予想する。学生諸君、がんばって!
そんな就活学生をターゲットにした本書だが、内容は「氷河期」に至った背景、企業側のルールなき採用活動、非正規労働者の増加、働き過ぎの理由、キャリア教育の必要性、「まともな」働き方とは何かなど、ひと通りコンパクトに解説している。
とりわけ、立場の弱い学生が企業側の都合に振り回され、就活期間の早期化・長期化が大学にとっても深刻な悪影響を与えていることに、企業側の改善努力を促している点は説得力がある。
また、晴れて一流企業の内定を得て入社にこぎつけた新人が、簡単に退社してしまう「七五三現象」(中卒は7年、高卒は5年、大卒は3年で退社するという意味)についても、原因はもっぱら過酷な長時間労働などを強いる企業側にあると力説している。
著者は長年にわたって関西大学で学生の就職問題にかかわる一方、過労死問題の解決にも尽力していることから、企業の社員の使い方に強い警鐘を鳴らしている。正直に言えば、本書を就活生が読んで「厳しい職場」の雰囲気はわかるにしても、「希望の一冊」になるかどうかは疑問だ。
また、「まともな雇用の対極にある」雇用として、派遣労働をヤリ玉に挙げ、「本来一体不可分の雇用と使用を分離することによって、間接雇用を容認し、労働市場仲介業者の中間搾取(ピンハネ)を合法化している」といった恐ろしいほどの誤解も載せている。同大OBが大手派遣会社のトップとして「雇用創造」を掲げているのは大いなる皮肉か。 (のり)