中国人の「中国問題評論家」による中国への警告書
『【中国版】サブプライム・ローンの恐怖』
著者:石 平
幻冬舎新書、定価740円+税
著者は日本に留学し、神戸大で博士課程を卒業後、2007年に日本国籍を取得した中国人である。
大学で教えながら、テレビ、講演、執筆などで活躍する「中国問題評論家」であり、中国の先行きに悲観論を唱える代表的論客。他の論者と比べ、中国の現在を政治と経済の関係、国内状況と対外政策の関係などを総合的に説いている点に特徴がある。
著者によれば、中国経済は米国の「サブプライム・ローン」問題で発生したと同様な「不動産バブル」が崩壊の瀬戸際にあり(第3章)、「インフレで死ぬか、バブル崩壊で死ぬか」(第4章)の状況に追い詰められている、という。しかも、このような経済的困難を受けて「民衆の暴動が止まらない」(第5章)状況に陥っており、暴動や騒乱は11年6月以降はさらに加速している、という。
このような国内情勢の緊迫化を受けて、国民の目を外にそらそうと、中国政府と中国軍は南シナ海での挑発行為に走り出している。その結果、「2012年を起点にして、バブル崩壊と前後する民衆の暴走と、それにともなう中国の対外暴走がいよいよ現実となってくるのである。」(終章)というのが著者の結論である。
確かに、「中国問題」の本質は明快に解かれているものの、あまりに論理が単線的であり、表面的な説明にとどまっている点に不満は残る。しかし、「中国問題」を考えるには、手っ取り早く論点整理が出来る必読書であろう。 (酒)