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2011年10月 8日

【この1冊】 『2012年、世界恐慌―ソブリン・リスクの先を読む』 

グローバル金融危機を総括し、世界恐慌を予測

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『2012年、世界恐慌―ソブリン・リスクの先を読む』

著者・相沢幸悦、中沢浩志
朝日新書、定価700円+税
 
 著者は長崎大経済学部教授(相沢)と三井住友銀行に勤務する為替と外債投資の実務家(中沢)である。
 
 本書は2008年以降のグローバル金融危機を分かりやすくまとめた上で、危機回避のための米国、EU、日本の金融・財政政策が結局はソブリン・リスク(国の財政破綻)を招き、蓄積されたマグマが12年ごろにはついに爆発して世界恐慌が訪れる可能性がある、と警鐘を鳴らす書である。
 
 10年春に出版されたときは、その表題のおどろおどろしさに週刊誌的な「トンデモ本」という印象が強かったが、その後の世界経済と金融危機の推移は本書の予測どおり。米サブプライム・ローン問題から現在のグローバル金融危機に至る流れを分かりやすくまとめており、グローバル金融危機を概観するには手ごろな1冊。
 
 ただ、1920年代の「大恐慌との奇妙な類似」を根拠に、「12年○月○日に世界恐慌が勃発する」という論旨には論理的飛躍がある、と言わざるを得ない。
 
 確かに1920年代の大恐慌との類似はあるかもしれないが、国際金本位制の存在や英国に代わる覇権国である米国の自覚不足による政策ミス等が恐慌の大きな原因になった20年代と現在の状況では異なっている点も少なくないからである。
 
 また、「今回の世界恐慌も、必ずや質的に高次の段階へ資本主義を導くに違いない」という究極の楽観論の根拠も不明である。
 
 いずれにしても、現在の状況をあまりにも楽観的に考えている政治家、官僚、企業経営者らには一読を勧めたい。 (酒)

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