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2011年9月24日

【この1冊】『世界の運命―激動の現代を読む―』

『大国の興亡』の著者による「少々エキセントリックなエッセイ集」

sekainounmei.jpg『世界の運命―激動の現代を読む―』
著者・ポール・ケネディ 訳者・山口瑞彦
中公新書、価格800円+税


 著者は歴史を主導した大国の盛衰を描いた『大国の興亡』で、世界的な名声を獲得したイギリスの歴史家である。本書はその著者が「『ホット』な出来事が凝縮していた・・・2011年という年の前半に起きた国際的な事象」を対象に書いたエッセイを集めたもの。

 著者自らが「少々エキセントリックなエッセイ集」というように、「いつも重々しく振舞うことを期待されている大学教授」と言う立場を離れ、比較的自由に書いており、一般読者も十分楽しめる語り口となっている。

 本書の宣伝文句「彼のエッセイは意外な話題から始まり、金融から安全保障までを語りつくす。彼の博識とウイットに満ちた文章に魅せられているうち、私たちは現代世界の本質へと導かれているのだ」という内容になっている。

 ただ、本書から「激動の現代」の「世界の運命」の解決策を読み取ろうとすると、失望することになろう。著者は「激動の現代」を読み解きながら、次のように言うだけだからである。

 「世界は混乱と落とし穴だらけである。世界がどこに向かっているかを予測するのは、危険な作業である。しかしながら、全体として私はこう感じている。この惑星の大部分は、銀行と投資の世界の人々が考えているよりも、はるかに大きな摩擦を抱え、不協和音に満ち、内部崩壊に近づいている、と」(酒)


 

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