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2011年8月13日

【この1冊】『昭和史1926→1945』

戦前の昭和がわかる現代人の「教科書」

syowashi.jpg『昭和史1926→1945』
著者・半藤一利
平凡社、定価1600円+税


 日本にとって「8月15日」が特別な日である以上、その日をめぐる史料、解説、評論、回顧ものなどが多いのは当然だが、近年は基本的な事実関係はほぼ解明されているためか、枝葉末節の「新事実」を誇張したり、「太平洋戦争は正義の戦だった」など、逆張りを狙った勇ましいのも少なくない。

 そうした凡百の解説書の中で、複雑な事実関係を膨大な資料と豊富な取材を基にきっちり押さえ、客観的に昭和史をたどったものとして本書は突出している。

 本書は「戦前の昭和」(1926~45年)を15章に分けてたどっている。28年(昭和3年)の関東軍による張作霖爆殺事件から起こし、満州国建国、5・15事件、天皇機関説事件、2・26事件、三国同盟、対英米開戦、ポツダム宣言受諾、敗戦など、昭和史の節々の出来事について詳細に解説している。

 詳細だが、寺子屋式の「音声保存の昭和史講座」で著者の語りをまとめたこともあり、文章は平易で非常に読みやすい。04年に出てベストセラーとなり、いまだに読者を獲得している理由がわかる。

 最後に著者は、現代のわれわれへの教訓として①国民的熱狂をつくってはいけない②日本人は国家的危機においても抽象的な観念論を好み、具体的、理性的な方法論を検討しない③日本のタコツボ社会における小集団主義の弊害――などを挙げ、「今日の日本人にも同じことが多く見られる」と断じている。

 2年後に本書の姉妹編『昭和史戦後編』も出したが、やはり天皇・マッカーサー会談、憲法制定、GHQ、東京裁判など一連の戦後処理の過程が白眉だ。

 そして、著者は「戦前は政治、軍事がいかに人間を強引に動かしたかの物語であり、戦後は私たちがいかに自主的に動こうとしたかの物語だ」と対比したうえで、「これからの日本はまた、むりに人間を動かさねば…という時代がくるやもしれぬ」と予言。その意味するところをじっくり考える夏にしたい。 (のり)

 

 

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