「霞が関の病理」を明快に分析
『官僚の責任』
著者・古賀茂明
PHP新書、定価720円+税
『日本中枢の崩壊』(講談社)に続く永田町・霞が関への告発第2弾。前著は経済産業省の現職キャリア官僚による政権批判ということで世の注目を集めたが、それがために経産省内に“蟄居”を命じられ、最近、クビを言い渡された。本人はそれを拒否し、本欄執筆時(7月28日)ではまだ決着していないが、そのさ中に出した第2弾も興味深い内部告発だ。
著者は「霞が関は人材の墓場」と言い放ち、本書でその理由を詳細に説明している。要約すれば、問題は役人の人生設計と深く関わっており、永年勤続と年功序列に支配された役所にとっては、省益優先と天下り先確保が至上命題。「国のため」と意気込む若手人材もいつしか初心を失い、組織の家畜に成り下がる。
こうした霞が関の構造問題については、猪瀬直樹氏の『日本国の研究』(1997年)以来、かなり掘り下げられるようになったが、本格改革の機運はない。著者も政治の力を借りて公務員制度改革に取り組んできたが、政治の腰砕けと「守旧派」の巻き返しで挫折し、逆に役所を追われそうになっている。
内部告発に踏み切る官僚はこれまでにもないわけではなかったが、ことごとく外部に追い出され、古巣では「自分の不遇を組織のせいにする不満分子」「パフォーマンスだけの目立ちたがり屋」と切り捨てる。
仮にそうであったとしても、霞が関の病理を明快に断罪する告発書は『日本国の研究』以来であり、この10年以上の間になんの改革も実践してこなかった霞が関は不治の病に罹っていると言わざるをえない。この際は、永田町と連携した若手議員・官僚による“クーデター”しかないか。 (のり)