加熱する資源争奪戦をわかりやすく
『世界の資源地図』
著者・布施克彦、岩本沙弓
青春出版社、定価1133円+税
大西洋のクロマグロが捕獲禁止になりかけ、日本で「大トロが食べられなくなる」と大騒ぎになったのは記憶に新しい。尖閣沖の「中国漁船衝突事件」で日中関係がぎくしゃくした時、中国からのレアアース(希土類)の輸入が滞り、「対日報復ではないのか」とこれまた騒ぎになったのも、つい最近のことだ。
現代の日本経済は全世界の国々と貿易していると言っても過言ではない。しかし、日ごろの生活で何気なく買い、消費しているモノの原料がどこで採れ、どんな規模で輸入され、どんな問題を抱えているのか、といったことについてはあまり知らない。
本書はそんな疑問に応える1冊。分野を鉱物、食糧、水産、森林に分け、資源価格に大きな影響を持つ国際マネーの流れにも1章を割いている。各分野とも生産、輸出入のシェアをグラフや表、イラストにまとめているのも親切だ。
巻頭には「資源争奪戦を読み解くキーワード」があり、「資源消費大国」の中国、それに続くインドの影響力を強調している。以前、米国で「チャイナ・フリー」(中国製品を使わずに生活する方法)を試みた専門家もいたが、結果は「不可能」だった。日中間も同様な経済関係にあることは間違いない。
読むほどに日本の「資源小国」ぶりが明らかになり、われわれの「豊かな生活」が、いずれ深刻な資源不足の影響を受ける分野も少なくないことを浮かび上がらせている。東日本大震災による原発事故と節電で、日本はこれまでの経済活動や日常生活の見直しを迫られている。そんな時節に出たタイムリーな1冊。 (のり)