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2011年6月 4日

【この一冊】『日本をもう一度やり直しませんか』

 代表的オピニオンリーダーによる日本再興論

sakakibarabook.png『日本をもう一度やり直しませんか』
著者・榊原英資
日経プレミアムシリーズ、定価850円+税

 

 著者は「ミスター円」と呼ばれた元大蔵省財務官で、金融・通貨の専門家。退官後、慶大、早大、青山学院大の教授を歴任しながら、著作や講演活動などを通じ、幅広い分野で影響力を行使している現代日本を代表するオピニオンリーダーの一人だ。 
 その榊原氏が東日本大震災後の日本を戦後最大の国難に直面しているとして、再興のため提言をまとめたのが本書である。 

 「大きな政府で国民の幸せを守る」「英語を第二公用語化して世界を目指しつつ、脱欧入亜をはかる」「成長至上主義より、より安全で美しい成熟国を目指す」などの主張がなされている。 

 しかし、1980年代以降の米国主導の「新自由主義」の理念に代わる新しい理念が示されているわけではなく、これまでのさまざまな議論の寄せ集めの感を免れない。つまり、何を、どう「やり直すのか」必ずしも定かではないのだ。
 そもそも、現在焦点になっているエネルギー政策について、原子力発電やその代替手段をどうするのか、全く触れていないため、表題に期待して手にした読者には欲求不満が残りそうだ。(酒)

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