テレビを信用している人にお勧め
『テレビの大罪』
新潮新書、 定価700円+税 著者・和田秀樹
マスメディアの中では、良くも悪くもテレビの影響力が大きい。ところが、当のテレビ関係者がそれをわかっていないため、社会に害を及ぼす情報をタレ流している。本書はそうした実例をたくさん挙げながら、かなり辛らつに解説している。
女性のやせ願望をあおるダイエット番組では、事実関係を検証せず、偉い先生の言うことを右から左に放送する。犯罪報道などでは事実確認もロクにせず、お抱えコメンテーターにシナリオに沿ってしゃべらせる。回転ドアで子供が死んだ事件ではビル側の過失だけ強調し、子供がどんな行動をしたのか報じない。犯罪事件では自分の責任で実名報道せず、逮捕されると手のひらを返したようにワイドショーで騒ぐ――。
どれをとっても思い当たる話ばかりで、納豆ダイエットをでっち上げたフジテレビ系の「発掘!あるある大事典」なども氷山の一角でしかないと納得できる。常識問題を解けない“バカタレ”を笑いのネタにするクイズ番組、日本語の原稿もしっかり読めない女子アナの低レベルぶりを平気で流す無神経さなど、著者でなくとも今の民放テレビの堕落に嫌気が差している人も少なくないはずだ。
どうすれば、まともになるのだろうか。著者は「大罪」を挙げるだけで、そこまでは触れていない。そこで提案。手始めに、くだらない深夜番組をはじめとするバラエティー番組は見ないこと。要するにテレビのスイッチを切るのです。
テレビにとって、最も大事なのは視聴率。「視聴者がいるから」という理由でテレビ側が低俗番組を続ける以上、見なければいいだけの話。このご時勢、節電も必要です。毎週1回、「ノーテレビデー」を設けるのも検討に値する。 (のり)