企業再生のプロが語る「打たれ強さ」の鍛え方
『挫折力-一流になれる50の思考・行動術』
著者・冨山和彦
PHPビジネス新書、 定価820円+税
著者は産業再生機構のCOOを勤めあげ、経営共創基盤(IGPI)を設立し、代表取締役に就任したいわば「企業再生のプロ」である。そのプロが特に若者に対して、「挫折力」=「挫折を愛し、乗り越え、生かしていく力」を鍛えよ!と説く本である。
要するに「挫折をしない人生ほど窮屈でつまらないものはない」「挫折をした人だけが、実り多い豊かな人生を送れる」と説く「挫折のすすめ」であり、若者に対する「応援歌」である。
著者の豊富な経験から導き出された箴言を50のポイントにまとめており、わかりやすい。例えば、【ポイント7】は次のようなものである。
「人間は失敗からしか学べない生き物。だから優等生人生は、不機嫌な人生、役に立たないリーダーへの道を約束している」。ここに典型的に見られるように、徹底的に批判の対象となっているのは「優等生」であり、優等生に多い「調整型リーダー」である。なぜなら、「これから日本も世界もおそらく数十年単位で続く不安定な時代に入っていく」が、「新しい時代を切り開くような、打たれ強いリーダー」が求められているからだ、と言う。
箴言の一つひとつには特に目新しいものはなく、どこかで聞いたことのある気がするものばかりだが、逆に言えば、これらの箴言をきちんと実行できる人がまれにしかいない、ということであろう。
ただし、世界の歴史的大変革期に日本は大地震、大津波、原発事故の三重苦に遭遇してしまった。従って、これから、日本企業はその大小にかかわらず、多かれ少なかれ、再生をかけて企業変革に取り組まざるを得ないだろう。その時に50の箴言の一つでも役に立てば、この本は無駄ではなかった、と言うことになろう。 (酒)